退職代行の基本情報

退職代行は違法なのか考えてみる

皆さんは「退職代行」サービスをご存じですか?近年の慢性的な人手不足により、あらゆる業界でブラック企業が増えてきた結果、辞めたくても辞めたいと言えずに悩んでいる人のためにできた新しいサービスです。

つまり、会社を辞めたい人に代わって、辞めたい旨を勤務先に伝えてくれる、辞めたいことを言い出せない方にとっては非常にありがたいサービスになります。

その一方で、退職代行は「退職代行を利用したら、違法になるんじゃないの?」とか、「退職代行って“非弁行為”に当たるんじゃないの?」など、新しいサービス故にさまざまな噂が飛び交っているのも事実です。

ではそれらの噂は本当なのでしょうか?そもそも「非弁行為」とはいったい何なのでしょうか?

このページではそのような「退職代行に関する違法行為の噂」や「退職代行が非弁行為にあたるのかどうか?」など、退職代行に関するあらゆることを検証していきます。

退職代行は違法なのか考えてみる①違法ではありません

boy sitting on bench while holding a book
Photo by Ben White on Unsplash

労働に関する法律は難しいものと一般的には捉えられていますし、決して簡単なものではありません。

ただ、日常生活を普通に送っていれば何も問題がないように、労働に関する法律とは、「働く誰もが当たり前に過ごせるルール」と考えれば、実はそれほど難しい問題ではないのも事実です。

もちろんここでは、分かりやすいように解説していきますので、安心して読み進めてくださいね。

そこでまず「そもそもなぜ退職代行は違法だと考えられるようになったのか?」についてご説明します。退職経験がある方の多くは、おそらくまずは自分の口で上司に辞めたい旨を伝えたことと思います。

それが他人を介して、辞めたい旨を伝えて貰うわけですから、「それって大丈夫?」と考える人がいるのも、当然のことでしょう。

ただ「退職の意向を伝える」という行為だけならば、本人の口から言うことが一番だとは思いますが、第三者である退職代行業者のスタッフが伝えても、何ら問題はありません。

その一方で、一般的に企業の多くは退職の意思表示として、文書による退職願の提出を求めます。

つまり、たいていの会社では、口頭で退職の意思を聞くだけではなく、退職願を提出して貰い受理することではじめて、退職を認めているのです。

以上のように、多くの企業では結論的には、本人から退職届を出してもらうことで退職を認めているわけですから、退職代行業者が行っている「依頼主の退職したいという意向を口頭で勤務先に伝える行為」はあくまでも「依頼主の退職のお手伝い」であるだけなので、違法にはあたらない、というわけです。

退職代行は違法なのか考えてみる②有給休暇の交渉もしてもらえるのか?

selective focus photography of stop road sign
Photo by Jose Aragones on Unsplash

一方で、「退職することを口頭で伝えて貰うことが違法にならないことは分かったけれど、じゃあもし有給休暇(以下、有給と略します)が残っている場合、その交渉も退職代行業者にやって貰っていいの?退職願も書いて貰っていいの?」という考え方も出てくると思います。

ではいったい、この「有給の交渉や退職願を代理で作成して貰うこと」などは、退職代行業者に対応してもらうことができるのでしょうか?

ちゃんとした退職代行業者は、非弁行為は行っていません!

結論から書いてしまえば、もし退職代行業者が依頼主に「有給の交渉や退職願を作成をしますよ!」と依頼主に言ってくれば、その業者は「アウト」です。

繰り返しになりますが、退職代行業者ができることと言えば、「依頼主の退職したい意向を伝えること」と「必要書類の郵送依頼を伝えること」だけです。それ以外の行為は、退職代行業者にはできません。もし退職代行業者が「有給の交渉や退職願の代理作成」を行えば、それは「非弁行為」になります。

「非弁行為」とは、字面通り、「弁護士法に反する行為・業務」のことを指します。

もう少し詳しくご説明すると、「弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うこと(弁護士法72条よる)」になります。

つまり、弁護士法では、弁護士以外のものが報酬を得て代理で交渉することを禁じているのです。

ちなみにもし、退職代行サービスが非弁行為を行ってしまった場合、退職代行サービス会社には、罰則が科せられます。

よって、きちんとした退職代行業者は、「有給の交渉や退職願を作成をしますよ!」なんて絶対に依頼主に提案しません。

あと、退職代行業者に支払う金額は、その業者や依頼主が正規雇用は非正規雇用かなど細かなところで若干異なりますが、一般的に、3~5万円とされています。

ですから常識的な退職代行業者か否かの判断材料として、この費用より極端に高かったり、逆に格安の場合は、依頼候補の選択肢に加えない方がいいでしょう。

ただ、悪徳な退職代行業者は、実に手口が巧妙。

どれほど「退職代行業者のできることは、依頼主の退職意向を勤務先に伝えることだけ」と繰り返しお伝えしても、言葉巧みに「いえいえ。令和になって法律が変ってね…」などと言って、できもしないことをできると提案して、高額な費用を請求してくる可能性は否定できません。

退職代行は違法なのか考えてみる③非弁行為

woman in dress holding sword figurine
Photo by Tingey Injury Law Firm on Unsplash

退職代行が非弁行為にあたる場合1:有給休暇の消化交渉
今さらではありますが、まずは「有休」について。有休とは、たとえ会社を休んでも有休の申請を会社にしておけば、勤務したとして休んだ日の分の報酬が得られる制度になります。

働いた経験のある方ならば、多かれ少なれ、利用したことのある制度だと言えるでしょう。

特に小さいお子さんを持つ働くママにとっては、非常にありがたい制度になります。

おそらく多忙な企業に勤めている場合、休みづらいこともあり、有給はかなり残っていると思います。

筆者も以前お世話になった会社で、残っていた有休は2か月分でした。余談ではありますが、2か月分も残っていたので、退職後、雇用保険を貰うまでの間の“つなぎ”として非常に助かったことを記憶しています。

話を戻して、退職するときに有休がかなり残っていると「うわぁこの有休、いったいどうなるんだろう…」と不安を感じますよね?ただ、その退職者の方がちゃんと有休の消化について勤務先に交渉できるタイプであったり、企業側に退職者の有休消化の実績があれば、有休消化の交渉はスムーズに進むと思います。

しかし実際のところ、退職者はとにかく辞めたい一心で有休の消化交渉をしなかったり、企業側に退職者の有休消化の実績がなく、残った有休自体を「なかったことに」してしまう会社も実際にあるようです。

ただ、もし退職後残る有休について、退職予定者本人の口から「消化をさせてほしい旨」を伝えることができないけれども、どうしても「有休消化をさせて欲しい」と思った場合、どうすればいいのでしょうか?

繰り返しにはなりますが、退職代行業者ができるのは「退職したい旨を伝えること」までになります。

そこで登場するのが弁護士です。弁護士なら「退職予定者が有休消化をさせてほしいそうなのですが…」と交渉することができます。

退職代行が非弁行為にあたる場合2:有給休暇の買取交渉
最近よくテレビなどのメディアで取り上げられているのが、この「有休の買取」ですが、皆さんは有休の買取制度についてご存じですか?その前に、皆さんは有休はよく利用されていますか?ニュースなどでもよく報じられていますが、日本は有休の消化率が諸外国に比べ非常に低い国です。

そんな中ここ数年、安倍政権が肝いり政策として推進してきた「働き方改革」の一環として、有給の取得率向上が掲げられていました。そして、2019年4月1日から、年10日の有給を得ている労働者に対して、会社は5日は有給休暇を取得させることが労働基準法(以下、“労基法”と略します)上の義務となったのです。よって、2019度より上記対象者は、最低でも5日間は有休を使えますし、使わなければならなくなりましたので、くれぐれもご注意ください。

話題を元に戻しますが、2019度より消化するのが義務となった有休は買取ができます。ただ、どんな場合でも企業に有休を買い取って貰えるわけではありません。しかし、この「退職者の退職後に残る有休」に関しては、買い取って貰うことが可能です。ただし気を付けていただきたいのが、「企業が必ずしも有休を買い取らなければならない訳ではない」ということ。

つまり、あくまで会社側の任意の行為であり、法的に強制的に買い取らせることはできません。そして企業に対し、「退職後に残る依頼主の有休を買い取って欲しい」という交渉を退職代行業者が行うことはできません。

余談ですが、「じゃあ、会社側としては、退職者から有休の買取をさせられるのって、その分費用がかかるわけだから損なんじゃない?」という考えが浮かぶかもしれません。しかし、有給を買い取る企業にもちゃんとメリットはあります!

それは、当然のことながら、有休消化中は在職扱いとなるため、その期間、会社は社会保険料の負担を継続しなければなりません。ところが、有休を買い取ってその分退職を早めることができれば、確かに給与相当額の金額の支払いはしなければなりませんが、買い取った分だけの社会保険料の負担を軽減することができます。ですから、企業にとっても絶対に損ではない話なのです。

退職代行が非弁行為にあたる場合3:ハラスメントの慰謝料請求
おそらく有休の次に退職予定者の中のモヤモヤ感として存在していると考えられるのが、こちらの「ハラスメント」の慰謝料請求でしょう。

ハラスメントと一言で言っても、その内容はさまざまで「パワーハラスメント(以下、“パワハラ”と略します)」「セクシャルハラスメント(以下、“セクハラ”と略します)」「モラルハラスメント(以下、“モラハラ”と略します)」など、多岐にわたります。

ちなみに「パワハラ」と「セクハラ」はそれこそ小学校の高学年でも概要が分かっているほど、一般語として定着していますが、「モラハラ」という言葉は他の言葉に比べればまだなじみが浅いので、念のためにご説明させていただきます。

勤務先における「モラハラ」とは、「職場で精神的苦痛を与えることを目的とした行為」のことを指します。

簡単に言えば、「職場での力関係のない同僚などによるいやがらせやいじめの行為」のことです。

そしてこれらのハラスメントに対し、会社には対策を取る義務があります。

それが「職場環境配慮義務」になります。つまり会社には、従業員が安心して働ける環境をつくる義務がある、というわけなのです。

もし退職予定者が「ハラスメントにより退職するわけだから、何も対策をとらなかった会社は慰謝料を支払うべきだ」と感じた場合は、慰謝料を請求することが可能になります。

こちらの行為も、退職代行業者は対応することができませんが、弁護士は依頼主の勤務先との交渉可能です。

退職代行が非弁行為にあたる場合4:損害賠償請求されたときの対応
例えば、勤務先で受けたパワハラが原因で、出社しようと思っても、気持ちと体の動きがちぐはぐになってしまい、家から出られなくなったとします。

その際、会社に連絡を入れればたとえ上司との間に禍根は残っても、最低限、対処すべきことはしているので問題はないでしょう。

しかし、会社に電話を入れようとしても、携帯を持つ手が震え、とても話ができるような精神状態ではない症状がずっと続いたとします。

それから数か月後、会社を辞める方向で話が進み始めたけれども、勤務先から「今まで無断欠勤した分は、損害賠償として請求をさせて貰う」ともし言われた場合、あなたならどう思いますか?おそらく大抵の方の場合は、なるべく支払わない方向に話を進めたいと思うことでしょう。

しかし、会社には労務があり、向こうは労働に関するプロでこちらは労基法の基本すら知らない労働の素人…。

「こんなときいったいどうすればいいの!?」とほとんどの方の場合、パニック状態になるのではないでしょうか。そこで登場するのが、こちらも今まで同様、退職代行業者ではなく弁護士になります。

ところで、上記はあくまでも事例ではありますが、こちらの話のように無断欠勤は絶対にしないでください。

そしてこんな事態になる前に、退職代行業者に相談して退職に向けて早急に動きましょう。

退職代行が非弁行為にあたる場合5:退職届などの書類の代理作成
おそらく大抵の方は、入社するときにさまざまな書類を貰い記入されたかと思いますが、退職時もいろいろな書類を貰い、記入や提出を余儀なくされます。

まず、退職予定者が勤務先に渡すのは「健康保険被保険者証」と「退職届(自己都合退職をする場合)」でしょう。

健康保険証なら渡すだけだから問題ないとして、面倒なのが退職届の作成になります。

退職願の提出は基本、その後の退職予定者の人生を変えかねない非常に重要なことなので、退職予定者本人が自分で行なわなければなりません。

ただ思い出していただきたいのが、会社の契約書に退職時には退職届を提出すべき旨が書かれている場合を除けば、本来ならば、口頭で本人が退職の旨を会社側に伝えれば退職ができます。

つまり、退職届は絶対に書かなくてはならないものではありません。

ただ繰り返しにはなりますが、会社の規定で退職時には退職届を書くことが義務付けられている場合は、その規定に従って退職届を書いてください。

しかも提出書類はこれだけではありません。

提出先は変わりますが、市区町村役場や税務署に「退職所得の源泉徴収票」「給与所得の源泉徴収票」「退職所得受給に関する申告書」「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出したり、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」「任意継続被保険者資格取得申請書」を提出したり、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出したりしなければなりません。

百歩譲っておそらく、ハローワークや税務署、市区町村役場などへは、気晴らし感覚で足を運ぶことができるでしょう。

しかし、勤務先に行くのはきっと足取りが非常に重いことになると思います。

しかも、勤務先からは「退職金の源泉徴収票」「給与所得の源泉徴収票」「雇用保険被保険者証」「健康保険被保険者資格喪失証明書」「厚生年金基金加入員証(厚生年金基金に加入していた方のみ)」「離職票(転職先が決まっている場合は不要)」を受け取らなければならず、これらの書類はすべて、これからの人生に必ず必要となるものばかりです。

以上より、どんなに気が進まなくても、勤務先に足運ぶ必要があります。

ただこれらの退職時に必要な書類の作成や対応なども、退職代行業者には対応はできませんが、弁護士なら、法的に正当な代理権限を有するので、退職届の書類の代理作成等の交渉権限があります。

ですから、弁護士の主張が法的に正当と認められるのではあれば、それらの一連の行為対応も可能というわけなのです。

ここまでお伝えすると、きっと多くの方が持たれた感想としては「じゃあ、退職代行も退職代行業者ではなく、弁護士に頼んだほうが、話がスムーズに進むのでは?」ということでしょう。

しかし、退職代行は退職代行業者に依頼をするのが一番だと言えます。

ではなぜこれほどまでに、弁護士が退職に関するさまざまなことに対応できるのに、あるいは、退職代行業者ができることは「依頼主の退職したい意向を勤務先に伝えることだけ」なのに、退職代行は退職代行に頼むのがベストなのでしょうか?

じゃあ弁護士に退職代行を頼めばいいの?それとも…
ここまで読んでいただくと、きっと「なんで弁護士ではなくて、退職代行業者に退職代行を頼むのが一番いいのか?」と不思議に思っている方が大半でしょう。

ただ、退職代行を退職代行業者に頼むのがベストな理由は非常に簡単で、「弁護士費用に比べ退職代行業者に支払う額が格段に安いから」です。

おそらく多くの一般の方は、弁護士にお世話になる機会がほとんどないと思います。

ですから、弁護士に支払う費用の相場をご存じの方は少ないことでしょう。

ただ、弁護士費用は決して安くないことだけはどなたにも容易に想像がつくかと思います。

例えば現在はありませんが、廃止された弁護士報酬規程を参考に、かかる弁護士費用を紹介すれば、次の通りになります。

・経済的利益が300万円以下:着手金8%、報奨金(経済的利益の16%)
・経済的利益が300万円超3,000万円以下:着手金5%+9万円、報奨金10%+18万円
・経済的利益が3,000万円超30億円以下:着手金3%+69万円、報奨金4%+738万円

一方退職代行業者に依頼した場合、既述の通り3~5万円が相場です。

あくまでも弁護士費用は参考ではありますが、退職代行にプラス「有休の買取交渉」などをして貰ったときの金額は、おそらく退職代行業者を上回ることが容易に想像できると思います。

退職代行は違法なのか考えてみるを読んだあとのおすすめ記事